ラーメンは基本的に価格を強く意識した食べ物だ。 味に優れた名店ですら1000円を超えるラーメンは珍しい。 これはラーメンが安く済む料理だからそうなっているのかと言われると、そんなことはない。 出汁のバリエーションは無限だ。 鶏ガラスープを取るのに地鶏を使えば当然値段がかかるし、煮干しにしても産地・サイズで値段が変わる。 煮干し20g入れたラーメンと煮干し50g入れたラーメンは当然後者のほうが濃厚な出汁になるはずだが、コストとして煮干しを50g使えるのかは別問題だ。 素材によっては不漁で仕入れ値が急に上がるかもしれない。 我々が普段食べるラーメンは700円だの800円だの常識が決めた価格の中でチューニングされた結果であり、ラーメンとは制約の上で成り立っている芸術なのである。
家で作るラーメンはこの制約を無視するので、店のラーメンとはそもそもの土俵が違うのだが、これが同じ土俵に立ったらどうなるのか?と考えるのが今回の記事だ。
計算対象
過去に作ったラーメンのうち、独断と偏見で次の3つをピックアップした。
ホンビノス塩ラーメン - おいしいラーメンが食べたくて
貝が高そうだが、材料は比較的シンプル。
家二郎 - おいしいラーメンが食べたくて
規格外のヤサイやブタが値段にどう影響するか。
セメント系煮干しラーメン - おいしいラーメンが食べたくて
大量の煮干しに相当金がかかっていると思われる。
これらの原価をしていく。
計算
- 業務用の仕入れ値ではなく、スーパーで買った値段を元に計算する。
- チャーシューに煮たタレは含めなかったり、メンマとか1枚でいくらなのかとか細かいところは良い感じに察して計算する。
ホンビノス塩ラーメン
- 出汁 487円<
- ホンビノス貝 200g 180円
- 鶏むね肉 300g 240円
- 日高昆布(頭) 5g 27円
- 干し貝柱 5g 40円
- カエシ 20円
- ぬちまーす(塩) 5g 20円
- 香味油 20円
- ラード 20g 20円
- 麺 80円
- 市販の麺 80円
- トッピング 80円
- メンマ 10g 20円
- 白ネギ 10g 10g 10円
- 低温調理 肩ロース 30g 45円
合計 687円
ホンビノス貝が高いと思いきや、胸肉が一番高い。 昆布も高いと思ったがそこまでで、干し貝柱は(味にそこまで貢献しないわりには)やっぱり高い。
家二郎
- 出汁 180ml 55円
- げんこつ 70g 35円
- 背ガラ 25g 20円
- ニンニク 1/4片 1円
- 玉ねぎ 1/100個 1円
- ネギの青いところ 無料
- カエシ 138円
- 海の精 旨しぼり醤油 60ml 90円
- みりん 30ml 10円
- 味の素 15g 38円
- 香味油 45円
- ラード 45g 45円
- (自家製)麺 250g 100円
- 小麦粉 182g 90円
- かんすい 2g 2円
- 塩 2g 8円
- 水 無料
- トッピング 355円
- ニンニク 5片 100円
- もやし 一袋(200g) 30円
- キャベツ 適当 無料
- ブタ(肩ロース) 3枚 150g 225円
合計 590円
圧倒的な出汁の安さ。骨の偉大さが身に染みる。麺は市販だともっと高くなりそうだが、自家製麺で安く収まった。 カエシ、脂はシンプルに量の問題で高く、トッピングも同様にして異様に高い。 業務用なら大量に仕入れる分ブタは安くできるはずだし、中国産のニンニクを使ったりでコストダウンの余地は十分ありそうだが、趣味で作るとこれぐらいの値段でまあ納得。
煮干しラーメン
- 出汁 195円
- 煮干し(愛媛産) 30g 48円
- 伊吹いりこ 30g 84円
- あご 7g 30円
- 宗田節 10g 33円
- 香味油 48円
- ラード 20g 20円
- 伊吹いりこ 10g 28円
- カエシ 43円
- 海の精 旨しぼり醤油 20ml 30円
- ぬちまーす 2g 8円
- みりん 5ml 2円
- 酒 5ml 2円
- リンゴ酢 2ml 1円
- トッピング 115円
- 海苔 1枚 20円
- ネギ 10g 10円
- 玉ねぎ 少々 10円
- 豚バラチャーシュー 50g 75円
合計 396円
出汁が一見安く済んでいるように見えるが、これらは築地で仕入れたものなので業務用価格。これ以上安くなる余地は少ない。とはいえ思ったより安く仕上がった。
考察
まとめる。
- ホンビノス塩ラーメン 687円
- 家二郎 590円
- 煮干しラーメン 396円
煮干しラーメンが一番高いと思ったが、そんなことはなかった。 二郎は出汁が安いがブタが高い。 ホンビノスはワーストとなり出汁に使った鶏肉が高かった。ただこれは鶏ガラで代用したりでコストを抑える余地は十分にある。
ラーメン屋の原価率は3割ぐらいらしいので、シンプルに3倍したものを店頭価格とすると次のようになる。
- ホンビノス塩ラーメン 2061円
- 家二郎 1770円
- 煮干しラーメン 1188円
異常な価格設定になった。例えば実際の二郎は700円ぐらいなのでむしろ店側の涙ぐましい努力のほうが異常なまである。 700 / 1770 = 0.4 なので、業務用価格にすると40%になると仮定する・・・のはあまりにめちゃくちゃなので、60%が業務用で仕入れたときの価格と想定して計算する。
- ホンビノス塩ラーメン 1236円
- 家二郎 1062円
- 煮干しラーメン 712円
なんとなくそれっぽい値が出た。
結論
ラーメン屋はすごい。